特区民泊とは?のメリット・デメリットを徹底解説!

「特区民泊とは、一般的な民泊新法と何が違うのか」
「特区民泊で運営できる場所はどこになるのか」
「申請って簡単なのかな」

民泊を始めようとした時に必ず出てくる特区民泊。

具体的に民泊新法や旅館業と何が違うのか、どこで実際に運営できるのかなど分からないことが多々あることでしょう。

当記事では、特区民泊として運営できる場所や申請方法、民泊新法や旅館業法と比べてどのようなメリットやデメリットがあるのかを詳しく解説します。

監修者
民泊管理バンク 代表 高橋拓真

池袋で民泊運営しながら民泊代行サービスも展開

2018年に鎌倉で民泊運営を開始。その後、民泊運営代行も運営する傍ら、池袋(東京都)でも自社の民泊を運用中。

客単価と稼働率を上げることが得意。民泊運営のリアルな情報を発信している。

>プロフィールを見てみてる

続きを見る

特区民泊とは

まず、特区民泊とは、国が国家戦略特別区(ビジネスがしやすい環境を作ることを目的とした地域)に限って運営できる民泊のことです。

その限られた地域内であれば、誰でも簡単に民泊をはじめられるため運営のハードルが低くなります。

たとえば、特区民泊と同じように365日営業できる旅館業法(旅館やホテル営業)と比べると、消防の設備が緩和されておりフロントの設置も必要ないため、どのような物件でも審査が通りやすいという特徴があります。

また、一般的に知られる民泊新法が180日しか営業できないのに対し、特区民泊では365日運営が可能です。

ただし、特区民泊では宿泊客の滞在期間が最低2泊3日以上と決められているので注意しましょう。

このようにさまざまな違いがあるため、下記の表をもとにそれぞれの違いや特徴を確認してみてください。

特区民泊民泊新法旅館業法
許認可認定届出認定
日数制限2泊以上の滞在が必須年間180日以内365日宿泊制限なし
最低床面積一居室の床面積原則25㎡以上あれば何名でも可能1人辺り3.3平米以上1人辺り3.3平米以上
衛生措置換気・採光・防湿・清潔など定期的な清掃など換気・採光・防湿・清潔など
非常照明設置家主居住型は緩和設置
消防設備設置家主居住型は緩和設置
近隣トラブルの措置近隣住民への適切な説明、苦情対応宿泊者への説明義務
苦情解決の義務
(届出時にマンション管理規約、
賃貸住宅の賃貸契約書の確認必須)
なし
管理業者への委託義務なし家主不在型の場合はありなし

特区民泊が運営できる場所とはどこ?

先ほどお伝えしたように、特区民泊というのは必ずしも全国でできるわけではなく、一部の限られたエリアだけで運営が可能です。

具体的な運営可能なエリアは下記があげられます。

  • 東京都大田区
  • 千葉県千葉市
  • 新潟県新潟市
  • 大阪府大阪市・八尾市・寝屋川市
  • 福岡県北九州市

しかし、「民泊の地域が限られているだけで、簡単に運営できるならやってみたい」と特区民泊を選ぶのは、大赤字になる恐れがあります。

民泊で利益を上げるためにも、特区民泊のメリットやデメリットについて、しっかり確認しておきましょう。

特区民泊のメリット3選

特区民泊は、国が「誰でもビジネスがしやすい環境を提供する」と決めた地域で運営するため、自治体に認められれば、他の民泊新法や旅館業法よりも簡単にはじめられるのが大きな特徴です。

主なメリットは、下記の3つがあげられます。

  1. 365日営業できる
  2. 申請が通りやすい
  3. 近隣住民から反対されにくい

1.365日営業できる

まず、特区民泊では、ホテルや旅館と同じように、年間の営業日数に制限がありません。

たとえば、民泊新法では180日しか営業できないと決められていますが、特区民泊では年間通して運営できるため、稼働期間が実質2倍になります。

民泊新法では、営業できる180日以外にも収入減を得るために、たとえばマンスリーマンションとして貸し出すなどの工夫が必要で、なかなか大変な作業です。

一方で、特区民泊は休まず営業できるので、常にOTA(Airbnbや楽天トラベルなどの予約サイト)に掲載するだけで集客が可能になります。

365日営業できるので、単純計算で民泊新法よりも2倍の売上を作ることができます。

2.申請が通りやすい

2つ目に、特区民泊は、保健所に認められるための消防設備がかなり緩和されているため、申請が通りやすいというメリットがあります。

たとえば、同じ営業日数に制限のない旅館業法では、消火器だけではなく屋内消火栓設備やスプリンクラー、誘導灯など大がかりな設備をそろえないと消防署からの認可が下りません。

さらに旅館業法では、フロント設備(玄関帳場)の設置や、個室が5〜10室必要となり、一般住宅で許可を得るのはかなり難しくなります。

しかし、特区民泊では一般的な家庭に置かれている消火器や火災報知器などで賄えることがほとんどなので、保健所からの認定を比較的簡単に受けられます。

3.近隣住民から反対されにくい

最後に、特区民泊は地域が限定されることから、すでに運営されている民泊施設が多いため、近隣住民の理解が得やすいというメリットがあります。

民泊物件が多いと、近隣住民も「またあの辺りで民泊がはじまったのか」と思うだけでそれほど気にしませんし、もともと民泊運営が「自分たちにどのような影響があるのか」を知っているのでほとんどの方が受け入れてくれます。

反対に、どこでも運営できる民泊新法では、民泊物件がまったくない地域ではじめようとすると、近隣住民から反対されることが多いです。

そのため、民泊新法と比べて近隣からの反対を受けずにスムーズに民泊運営を始められるといえるでしょう。

特区民泊のデメリット3選

ここまで、年間を通して営業できることや申請が通りやすいというメリットをお伝えしましたが、それだけで特区民泊を運営しようと決めるのは危険です。

特区民泊を検討する場合は、必ず下記の内容がリスクであるとわかった上で進出する必要があります。

  1. 最低宿泊日数が決まっている
  2. 価格競争になりやすい
  3. 認定されるまで時間がかかる

1.最低宿泊日数が決まっている

まず、特区民泊では、ゲストの最低滞在日数が2泊3日からと決まっています。

そのため、1泊のみの宿泊が多いビジネスマンや、飛行機の乗り換えをしようとしている短期宿泊目的のお客様からの予約を取ることができません。

実際の失敗事例でいうと、365日運営できることを良かれとしてゲストハウスを開業したのに、2泊以上という制約があるため、お客さまがなかなか入らなかったということもあります。

このような失敗をしないように必ず、長期宿泊者をターゲットにした宿づくりが必須となります。

2.価格競争になりやすい

次に、特区民泊のデメリットとしてあげられるのが、近所に競合が多く、価格競争が激しくなることです。

国家戦略特区内の限られた地域であれば、どのような建物(マンションの1室や空き家など)であっても申請が通りやすいため、民泊施設が密集しています。

同地域で民泊がたくさん運営されているために、平均的な物件1泊の相場が15,000円だった場合でも、特区民泊では8,000円と単価が下がってしまうことが多いです。

民泊新法の2倍の日数で運営できるメリットはありますが、同じ床面積での物件1泊の値段が下がるのはデメリットに感じる方が多いでしょう。

特区民泊を運営する際には価格競争に巻き込まれないだけの魅力のある宿作りをするか、そもそも特区民泊で運営しないという判断が必要です。

3.認定されるまで時間がかかる

最後に、保健所に認定されるまでにおよそ2週間程度の時間がかかってしまい、なかなか運営が開始できないというデメリットがあります。

民泊新法では保健所への届出が受理されればすぐに営業を開始できますが、特区民泊の場合は申請後に申請内容と実際の宿の状況が合っているかという現場調査が行われます。

現場調査は保健所とオーナーの日程を合わせる必要があるため、タイミングによっては許可取得まで3週間以上かかる場合があったり、申請内容と異なる場合は再調査となってしまったりすることもあるので注意が必要です。

そのため、現場調査前に申請内容と宿の実態が合っているかをしっかりと確認しておくことをおすすめします。

特区民泊の申請方法とは

このように、特区民泊にはさまざまなメリットやデメリットがあります。

しかし、もともと国家戦略特区に空き家がある方や安く物件を借りて住んでいる方など、このエリアなら自分も立地に詳しいので民泊を始めてみたいという方もいることでしょう。

弊社では大田区のご相談が多いので、大田区の例を使って申請方法の仕方をお伝えすると下記のようになります。

  1. 保健所への事前相談
  2. 近隣への周知
  3. 保健所への申請書の提出
  4. 民泊施設の立ち入り調査

1.保健所への事前相談

まず、運営したい物件が特区民泊で運営できる場所にあるのか確認し、物件の図面をもって保健所へ事前相談へ行きましょう。

事前相談では、特区民泊の申請でそろえなければならない書類や、物件に必要な消防設備などを詳しく教えてくれます。

消防設備に不備があると、後述する必要な申請書類の「消防法令適合通知書」が発行されず、なかなか申請許可が下りません。

事前相談でしっかり必要事項を聞いておけば、立ち入り検査に引っかかったり、いつまでも営業できなかったりすることが避けられます。

2.近隣への周知

続いて、これから民泊を円滑に運営していくために、近隣住民へ自分の物件を周知しましょう。

この住民への周知は、夜中にゲストが騒いだり、ゴミの捨て方を間違えたりすることもあるため、自分の物件の所在や苦情先などをあらかじめ知らせて、近隣住民とトラブルを避けるものです。

説明会を開く方もいますが、一般的には施設の説明書を作成して近所のポストに投函することが多いです。

周知した結果、近隣住民に民泊を反対されたとしても、説明したことを保健所に報告すれば自治体の許可はおりますが、気持ちよく民泊のオーナーとなるためにも、近隣住民への理解は得ておきたいものです。

物件の説明書を作成して、近隣住民への周知は忘れずに行いましょう。

3.保健所への申請書の提出

事前相談と近隣住民への説明が終わったら、保健所へ申請書を提出します。

書類については後で記載しますが、個人なら住民票の写しや施設の図面、ゲストと結ぶ契約書、賃貸で民泊を行う場合は物件を所有している方の許可をとった証明書などが必要です。

これらの書類作成が面倒な方は行政書士に頼むこともできますが、保健所へ事前相談をしたときに教えてもらったことを、ひとつひとつクリアすれば、それほど難しい内容ではありません。

行政書士にお願いすると約15万〜20万程度かかるので、なるべく初期投資を抑えたいという方は自分で申請することをおすすめします。

4.民泊施設の立ち入り調査

申請書の提出が終わったら、いよいよ保健所職員による民泊施設の立ち入り検査です。

旅館業法ほど基準は厳しくありませんが、客室床面積や必要な消防設備のチェック、換気や衛生面などの現場調査がおこなわれます。

保健所や消防署で聞いた設備を整えておけば問題なく許可がおりますが、もし不備があった場合でも、指摘された点を改善した後に、再び立ち入り検査をお願いできます。

とはいえ、保健所職員と日程のタイミングが合わないと営業できるまでの期間が長引いてしまうので、立ち入り調査は1度でクリアしたいところです。

申請書の提出と立ち入り検査が終われば、自治体の認定書が送付されます。

そこに記載された認定番号を宿泊サイトに登録すると、特区民泊運営がスタートできます。

特区民泊の認定に必要な申請書類とは?(東京都大田区の場合)

先ほどお伝えした、保健所へ提出する特区民泊の認定に必要な申請書類について簡単にご説明します。

特区民泊が運営できる自治体により、申請書類が少々異なるので注意してください。

弊社では主に東京都大田区でのご相談が多いので、こちらを例に取り上げると以下のようなものがあげられます。

  1. 住民票の写し(個人の場合)
  2. 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款
    (利用者とあらかじめ結ぶ契約書のこと。短期賃貸借契約や一時使用契約がある)
  3. 施設の図面
  4. 近隣住民への周知を完了した旨の報告
  5. 近隣住民からの苦情、問い合わせに適切に対応するため体制や方法
  6. 施設を事業に使用するための正当な権利を証明する書類
    (賃貸や転借で民泊を運営する場合は物件を所有している大家さんや、不動産業者に民泊運営の許可をもらった証明書)
  7. 消防法令適合通知書 

このように特区民泊で運営したいと考えている方は、まずは特区民泊の自治体名を調べて、それぞれの行政から指示された書類を提出するのがよいでしょう。

申請方法のやり方が分からない場合は、事前に保健所に相談に行くと教えてもらえるのでおすすめです。