特区民泊と民泊新法の違いは?制度の特徴やどちらがよいのか解説

民泊を始めようと思うけれど、特区民泊と民泊新法って何が違うの?と疑問に思っている人は多いのではないでしょうか。民泊を運営するなら、特区民泊と民泊新法の違いを理解する必要があります。この二つの制度は、年間の営業日数や最低宿泊日数の違いなどが特徴です。

本記事では、特区民泊と民泊新法の基本的な違いと、それぞれの特徴についてやさしく解説していきます。これから民泊を始めようと考えているオーナーさんの参考になれば幸いです。

監修者
民泊管理バンク 代表 高橋拓真

池袋で民泊運営しながら民泊代行サービスも展開

2018年に鎌倉で民泊運営を開始。その後、民泊運営代行も運営する傍ら、池袋(東京都)でも自社の民泊を運用中。

客単価と稼働率を上げることが得意。民泊運営のリアルな情報を発信している。

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特区民泊と民泊新法の違いとは?

特区民泊と民泊新法を一覧にすると下記のようになります。大きく違うのは、営業日数と最低宿泊日数、管理業務の委託です。

特区民泊民泊新法
行政への申告認定届出
年間の営業日数の制限なし180日
最低宿泊日数の制限2泊3日以上なし
住居専用地域での営業なしあり
フロント設置なしなし
住民説明会ありあり
居室の床面積1居室25㎡以上一人当たり3.3㎡以上
行政の立ち入り検査条例で制定あり
契約形態賃貸借契約宿泊契約
宿泊者名簿必要必要
管理業務の委託不要必要

ここからはこの表をふまえて、特区民泊と民泊新法の特徴を5つ説明していきます。

特区民泊の5つの特徴

特区民泊は「国家戦略特別区域法」のもとで運営される、旅館業法の特別な形態です。この制度は、政府が特定の地域を選んで、新しいビジネスの創設や投資を促すことにあります。

簡単に言うと、政府はこれらの地域に外国人観光客を積極的に呼んで、地域を活性化させようとしているのです。手続きは簡素化されており、必要な要件を満たせば特区民泊としての認定を受けることができます。

ここからは、より詳しく特区民泊の下記の5つの特徴について解説していきます。

  1. 旅館業法より申請が簡単
  2. 365日運営できる
  3. 最低宿泊日数の制限がある
  4. 床面積の条件が比較的緩い
  5. 管理業者への委託が不要

1.旅館業法より申請が簡単

特区民泊は都道府県知事から許可をもらう必要がありますが、実際に書類を申請するのは地域の保健所です。書類の内容はそれぞれの自治体により異なりますが、民泊新法より多く旅館業法よりは少ないとイメージしていただければよいでしょう。

申請時には、消防法に適合した消防設備を設置していなければなりませんが、民泊新法と比べると比較的緩和された要件が設定されている地域が多いです。

書類申請後に保健所の立ち入り検査などもあり、申請から認定が下りるまで早くても2週間〜1か月必要です。賃貸物件の場合、その間も家賃を払わなければならず、その分のコストも考慮する必要があります。

2.365日運営できる

特区民泊での一番のメリットは、年間の営業日数の上限の定めがないことです。これは実質365日営業が可能ということ。この柔軟性は特区民泊を選択する魅力の一つでしょう。

一方、民泊新法の場合は年間180日の営業という上限規制があります。そのため、特区民泊にすれば計算上は売り上げが2倍になるということです。

3.最低宿泊日数の制限がある

特区民泊は、主に外国人観光客のインバウンド需要を満たすことを目的として作られた制度です。そのため、2泊3日以上の連続した宿泊のみが許可されています。

一方、民泊新法では、最低滞在日数の制限が設けられていません。日本人観光客は、週末の1泊2日の旅行を好む傾向があるため、民泊新法はこのようなニーズに対応しています。

民泊事業を運営する際には、ターゲットとするゲストを考慮してどちらの制度を選ぶかを決めることが重要です。

4.床面積の要件が比較的緩い

旅館業法(簡易宿所)は原則1室33㎡以上(収容定員が10人未満の場合には3.3㎡×収容定員)の床面積が必要です。特区民泊は原則1室25㎡以上です。

特区民泊は台所・浴室・トイレ・クローゼットなども床面積に含むケースが多く、旅館業法よりも要件が緩和されている傾向にあります。大阪府では、滞在者数8人未満であれば最低床面積は1人あたり3.3㎡以上で許可が下りるなど、個別の要件を設けています。

このようにそれぞれの自治体で要件が異なる場合があるため、物件のある自治体に確認することが大切です。

5.管理業者への委託が不要

民泊新法では、家主不在型の民泊の場合、民泊施設の日常的な管理を専門の住宅宿泊管理業者に委託することが義務付けられています。一方で、特区民泊にはこのような住宅宿泊管理業者への委託が必須ではありません。

つまり、特区民泊では住宅宿泊事業者自身が、直接民泊施設の運営を行うことが可能です。自分自身が考えるような運営ができ、コスト削減できることがメリットでしょう。

ここまでは特区民泊について解説してきました。次からは民泊新法について5つの特徴を説明するので、それぞれの違いについて確認していきましょう。

民泊新法の5つの特徴

民泊新法とは、正式には「住宅宿泊事業法」と呼ばれています。個人が所有する住宅を短期間で旅行者に貸し出す「民泊」を合法化し、規制することを目的としています。保健所への届出が必要ですが、オンライン上で所定の書面を提出をするだけで、簡単に民泊を始められます。

ここからは、民泊新法の下記の特徴を解説していきます。

  1. 保健所に届出をすれば営業できる
  2. 宿泊日数の上限が年間180日と決まっている
  3. 1泊2日から宿泊できる
  4. 床面積の要件が緩い
  5. 管理業者への委託が必要

1.保健所に届出をすれば営業できる

民泊新法の場合、都道府県に民泊の届出を行います。実際には物件のある市町村の保健所に必要書類を提出するのですが、民泊制度ポータルサイトからのオンライン申請でも可能です。

書類に不備がなければ、届出を出せば基本的に民泊の営業が開始できます。つまり、特区民泊のように、保健所からの許可を待つ必要はありません。

2.宿泊日数の上限が年間180日と決まっている

民泊新法の場合、旅館業法や特区民泊と違い、一年間の営業日数の上限は180日以内です。なお、180日という日数は、国土交通省や厚生労働省によって定められており、自治体によっては独自の縛りを設けている場合もあります。

例えば、東京都新宿区の住居専用地域は、月曜日12:00〜金曜日12:00まで民泊の営業を禁じるなど特別なルールを設けています。自分自身が民泊を運営しようとする地域がどのような独自のルールがあるのか、事前の確認が必要です。

参考:民泊の180日ルールとは?4つの抜け道をご紹介!

3.1泊2日から宿泊できる

民泊新法と特区民泊では、最低宿泊日数に違いがあります。特区民泊は最低2泊3日からの宿泊しか許可されておらず、主に長期滞在の外国人観光客をターゲットとしています。

民泊新法には最低宿泊日数の制限はなく、1泊2日から宿泊可能です。そのため、日本人観光客にとって宿泊しやすい宿になります。

4.床面積の要件が緩い

民泊新法では、最低床面積の要件は各居室1人あたり3.3㎡以上です。比較的緩やかな要件であり、小さな物件やアパートでも民泊として利用が可能です。

特区民泊は原則1室25㎡以上と定められています。これは民泊新法より厳しい要件であり、より広いスペースが必要です。大人数のゲストを受け入れられるため、ファミリーやグループでの旅行に適しています。

民泊物件を選ぶ際には、民泊新法の方が選択の幅が広がるでしょう。

5.管理業者への委託が必要

民泊新法では、家主不在型、または家主居住型でも1物件の中に6部屋以上ある場合には「原則、住宅宿泊事業者は住宅宿泊管理業者に管理業務を委託する」という義務が定められています。そのため、住宅宿泊事業者だけで民泊運営を行えるわけではなく、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。

民泊特区の場合は、住宅宿泊管理業者への委託は必要ないため、自分自身で運営や管理をすることになります。

参考:住宅宿泊管理業者の資格を自分で取得する方法

特区民泊と民泊新法はどちらがよい?

ここまで特区民泊と民泊新法について特徴を説明していきました。すでに物件を所有している場合は、その地域に適合する法律に従う必要があります。しかし、これから探す場合にはどちらの法律を選んだらメリットが大きいのか、比較や検討してみましょう。

  • 特区民泊は一年中営業できる
  • 民泊新法は1泊2日から宿泊できる

このように特区民泊と民泊新法はそれぞれメリットがありますが、どちらの方が利益が出やすいのか説明していきます。

特区民泊は一年中営業できる

特区民泊は、年間の営業日数に制限がなく、長期滞在のゲストを受け入れることで安定した利益を得ることが可能です。しかし、2泊3日以上の宿泊しか許可されないため、週末に1泊2日を希望する日本人観光客には向いていないことがあり、外国人観光客が主なターゲットになります。

市場の競争は激しく、特にアパートタイプの民泊では1部屋5,000円でも予約が入らないことがあります。一戸建てタイプの場合は競合が少ない傾向にありますが、都内などの地域では通常1泊3~4万円が相場のところを、特区民泊では1泊2万円からの価格設定になることが多いです。ただし、価格が安い一戸建てを購入または借りることで、利益を出すことは可能です。

このように、特区民泊は条件によっては有利なビジネスモデルとなりますが、立地や物件の種類によって戦略を考えることが必要でしょう。

民泊新法は1泊2日から宿泊できる

民泊新法での民泊運営は、最低宿泊日数に制限がないため、オーナーは180日間の営業期間をフルに活用し高い回転率を目指す必要があります。

渋谷や新宿のような人気エリアや伊豆のような別荘地では、特区民泊と比べて競合が少なく、価格競争に巻き込まれることなく適切な価格で運営できます。さらに、民泊新法はどの地域でも運営が可能です。適切なエリアを選べば、年間180日の営業制限があっても特区民泊よりも高い売上を達成することができるでしょう。

ただし、営業できない日を単に空室のままにしておくのは、大変もったいないです。その間も家賃は発生するため、空いた部屋を他の方法で有効活用することが重要です。例えば、営業できない日はイベントスペースや、マンスリーマンションとして運用することで、空室期間を最大限活用し、収益を得ることが可能です。

参考:民泊とマンスリー併用型で売上を最大化!法律違反にならない方法を解説