民泊は、もともと不動産投資を目的とした宿泊ビジネスとして広がったものではありません。個人の暮らしや人との交流を起点に、生活の延長線上で、自然に生まれてきた宿泊の形です。
しかし、オリンピックを背景に市場が拡大し、民泊は事業化・ホテル化の方向へと変化していきます。
その結果「なぜその宿に泊まるのか」「どのような価値を提供するのか」といった、本来重視されるべき視点が、整理されないまま市場が拡大してきた側面もあります。
民泊の始まりとその後の変化は、宿泊事業にどのような影響を与えてきたのか。運営から事業化までを経験した株式会社Livmo 取締役会長 源 侑輝氏と株式会社BizPato代表取締役 高橋拓真氏とのインタビューを通じて、体験価値を軸に今後の宿泊事業の可能性を探ります。


池袋で民泊運営しながら民泊代行サービスも展開
2018年に鎌倉で民泊運営を開始。その後、民泊運営代行も運営する傍ら、池袋(東京都)でも自社の民泊を運用中。
客単価と稼働率を上げることが得意。民泊運営のリアルな情報を発信している。
お二人はほぼ同時期くらいから民泊を始めているが、なぜやろうと思ったのか?
高橋
私は高校の留学プログラムで1年間(2016年)オーストラリアに滞在しました。帰国後は岡山に戻ったのですが、英語を話す機会がほとんどなく「このままでは英語力が落ちてしまう」と危機感を抱いたんです。
そこで2017年、高校生のときに外国人も利用できる民泊を始めて、自分で英語を話す環境をつくりました。
ただ、外国人を自宅に泊めることに対して家族は心配だったようです。バックパッカーの方を迎えに行き、自宅に宿泊してもらうスタイルだったので不安も感じていました。
それでも、英語を話す機会を失いたくないという気持ちが強かったので、思い切って一歩踏み出しました。
源
私の場合は、シェアハウスの運営が背景にあります。お世話になっていた方がニューヨークでアパートメントホテルを運営していて、airbnb(オンラインの宿泊予約プラットフォーム)を使って成功していたんです。
その取り組みを間近で見ていて「このモデルは遅れて日本にも来るのでは」と感じていました。2013年、試しにシェアハウスの集客にairbnbを使ったところ、想像以上に予約が入りました。
当時は民泊という概念がほぼない時代で、私たちもホームシェアリングに近い形で運営していたと思います。一緒に料理をしたり、食卓を囲んだり、滞在後もSNSでやり取りが続くなど、ゲストとのつながりが自然と深まる場になっていました。
そこから事業にしていったのか?
高橋
結果的に「事業にした」という形です。大学進学で上京した当時、兄弟3人とも留学を経験していたこともあり、家計の負担が大きく、仕送りに頼れる状況ではなかったんです。
家賃をどう支払っていくかを考えるなかで、当時カウチサーフィンの有料版のように使われていたairbnbを活用しました。
自宅の一室を貸し出し家賃をカバーするという生活の延長線上で始めたのがきっかけです。ゲストは「ホストが同じ家に住んでいる」とは想像していないため驚かれることもありました。
生活のために続けていた取り組みが、徐々に事業として意識する対象へ変わっていったのだと思います。

源
当時は「施設をどんどん増やしていこう」という発想はありませんでした。Livmo(不動産ベンチャー企業)の収益がほぼゼロの時代で、メンバーと2人でワンルームを借り、机でスペースを区切って生活していたほどです。
それでも家賃が払えない時期があり「何かしなければ」と考えて、airbnbで宿泊者を募集しました。
すると特別なサービスはしていないのに、多くのゲストが泊まりに来てくれて「とても楽しかった」とレビューで評価してくれたんです。このような経験もあって、民泊は事業として成り立つと確信できました。
民泊というものが世間に浸透していくと思っていた?
高橋
正直、生活のために続けていた学生時代は、ここまで広がるとは思っていませんでした。
ちょうど私が本格的に民泊を始めた2018年は、民泊新法が施行されるタイミングで、規制が一気に厳しくなった時期です。実際、当時運営していた物件も法律の変更で突然続けられなくなり、その混乱を身をもって経験しました。
一方で、同時期に投資家の方々が民泊をビジネスとして捉え、大きな資金が流れ始めていることも感じていました。
「もしかしたら、これは大きな市場になるのでは」と薄く意識し始めたタイミングでもあります。
源
私も、当時はここまで浸透するとは考えていませんでした。正直、民泊はニッチなサービスで終わると考えていたんです。
ただ現在では、Booking.comにもアパートメントホテルというカテゴリーが設けられ、そこで宿泊先を探す人がいるほど、一般的な選択肢として定着しています。
ここまで体制が整って、市場に受け入れられるとは当時は想像していなかったです。

当時のモチベーションと今の民泊に対する評価は少し変わってきていると思うが、それに対してはどう思ってる?
高橋
当初の民泊は「誰かの家に泊まり、そこで暮らす人と時間を共有する体験」に価値がありました。
しかし近年、市場が成長するにつれて、運営のスタイルが徐々にホテル寄りに変化しています。この流れは資本主義的な構造から見れば自然ですが、地域の暮らしを感じる機会が失われていった点には違和感がありました。
だからこそ、今後は「その地域らしさをどう引き出すか」が重要だと思っています。例えば、バリで竹の家を建てるだけでなく、小さな竹材でイカダをつくって海に出るような、地域独自の体験に価値があると感じています。
「地域らしさを体験できるホテルを、無理なく市場の流れのなかで作っていく。」そのバランス感が大事だと感じています。
源
私は2015年頃に民泊の可能性を強く感じていました。宿泊体験の幅が広がり、ホスト滞在型や一棟貸しなど、多様なスタイルが生まれたからです。
ちょうど2017〜2018年には、オリンピック需要を背景に個人投資家が参入し、その後は大手デベロッパーも動き出して投資マネーが流れ込みました。ニッチだったホームシェアリングが注目され、私たちLivmoが取り組んでいた「くらし」という領域も、世の中に受け入れられていく期待感がありました。
しかし今は、多くの人が民泊を利回りの良い不動産投資として捉えてしまう傾向があります。本来は、宿泊費の裏側に「その施設に泊まる意味」が存在し、それが価値の源泉です。そこを考えずに投資だけで参入してしまう人も多いように感じます。
コロナ禍で一度市場が崩れたことで、本当に民泊としての本質に向き合っていたかが浮き彫りになりました。投資型の宿泊と、本来の民泊の体験価値が同じように扱われてしまっているので、定義を見直す必要があると感じています。

高橋
最近は50室規模のアパートメントホテルも増えていますが、そこまでいくと民泊ではなく、完全に別カテゴリーの宿泊事業だと捉えています。
後編:民泊の始まりと変化(後編)|体験価値から考える宿泊事業の未来
交流から生まれた民泊は、市場拡大とともに事業化・ホテル化が進んでいます。しかし、「なぜその宿に泊まるのか」「本来の民泊とは何か」という問いは、整理されないまま残されています。
現在の民泊はどのように定義されるべきなのか。
制度や運営の実情を踏まえたうえで、これから選ばれる宿泊事業に必要な条件とはなにか。
後編では、民泊を取り巻く現実的な課題を、制度や運営の視点から整理し、体験価値を軸にした宿泊事業の未来について踏み込こみます。
>民泊の始まりと変化(後編)|体験価値から考える宿泊事業の未来

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